最近、ぜーんぜん雨が降らない。朝目覚めてブラインドを開けると、そこには必ず拍子抜けするほど明るい青空。雨が降りそうな気配なんてないから、洗濯物は夜中に干して、思い出した頃に取り込むだけ。そししてホントに雨が降らないものだから、『明日できることは今日するな』という川口のおっちゃんの言葉そのままに、洗濯物は大通りを見下ろすベランダにぶら下げられたまま早4日目を迎えている。果たして、今日こそ取り込まれるのか? あるいはまたまた透明な夜を過ごして乾いた白い朝を迎えるのか?
と、洗濯物を取り込む手間も惜しんで更新しております今回の週刊カナマドリ。なぜなら明日は、ラジョ・バジェカノ対レアル・バジャドリ戦を観に行くからであります。大人数で行くので、チキンカツサンドでも作って行こうと思っているのであります。試合に勝つ、なんてね。それじゃ評判芳しくなかった先週と同じだな。チャンチャン。
上記の試合を見に行く目的は、もちろん、城彰二選手。この試合で彼は、初めてマドリでプレイすることになるのだ。きっとスタジアムはこの日を待っていた多くの日本人で埋め尽くされるだろう。だってバジャドリはちょっと遠いからね。行ったけどさ。ただ肝心の城選手が中国戦で負傷したという噂を聞いたけど、無事に出場できるのかな? 詳しくは、次号で。
そうそう、城彰二選手といえば、情感たっぷりのドラマーが叩くタムさながらにためにためた「キモチエハガキ」”Oliver y Benji”の解答。”Oliver”とは、15年ほど前に流行した「少年ジャンプ」連載のサッカーアニメ『キャプテン翼』の主人公、大空翼くんのことでした。『キャプテン翼』は随分以前にスペインでも放映され大好評を博したそうなのだが、その際、どうやら主人公の名前である大空翼が、”Oliver”(オリベル)と変えられたらしいのだ。”Benji”も同様に登場人物のことらしいのだが、それが日向小次郎くんのことなのだか、岬太郎くんのことなのだか、若島津くんだか若林くんだかは確認できず(※1)。
というわけで、新聞の見出し”Los Hijos de Oliver y Benji”は直訳すると、「オリベル(大空翼)とベンジの息子たち」。日本のサッカーが世界に進出するずっと以前に日本発サッカーアニメが浸透していたという背景を考えると、キャプテン翼くんたちが日本サッカーの先駆者的な存在で、中田や城はその後継者とでもいうべき存在として取り上げられたということだろう。というのが、私の解答。さすがにスペイン在住の人からは『キャプテン翼のことでしょ』と次々と冷静に言い当てられ、いささか驚いた。「大空翼の名前がオリベルなんていう風に変えられてて、それが新聞の見出しになるほど広く知られてるなんて!」と興奮したのは私だけだったのかも。いつものことなので今更赤面しないけどさっ。
オリベルに限らず、この国では、なんでも勝手に名前をスペイン語風に変える。英国エリザベス女王を『イサベル』、同皇太子を『カルロス』とスペイン語読みしていたのは以前に話した通り。同じく人名では、『マライア・キャリー』を『マリア・カリ』、『マイケル・J・フォックス』を『マイケル・”ホタ”・フォックス』、『U2』を『ウニ・ドス』(※2)と、まぁなんとも泥臭い名前に変えちゃっている。
ちなみに、「覚えにくいから」という理由だけで、私の名前もいろいろに変えられた。カナなんて覚えにくいか? と思うのだが(ちなみに「白髪」という意味のまさに”kana”と書いて「カナ」と読む単語もあるのだが(※3)。生ビールは「カーニャ」だし)、彼らが覚えにくいと言うんだから仕方ない。
というわけで、とあるバルでは、私は「マリア」。なっんの共通点もないこの名前を冠せられた理由なんて私の標準日本人的常識的オツムからはどう考えても思い付かないのだが、彼らがそう言うんだから仕方ない。仕方ないから、「マリーアッ!」と呼ばれて笑顔で振り向き、この名前を決めたバルの主人が息子に「この日本人の女の子はマリアという名前だ、お母さんと一緒の名前だな」なんてイカサマな説明をするのを笑って聞いては「はじめまして、私はマリーアよ」とインチキな挨拶をしながら小学生の男の子に熱烈なチュウを浴びせるしかないではないか。
先日、テレビを見ているとフアン・カルロス国王の姿が映った。スペイン映画通でありスペイン事情通でありスペインチョコチップクッキー&クロワッサンサンド通であるTさん曰く、最近ある映画に出演したという国王だ。もちろん役は、国王役。炭鉱労働者のヘルメットを被るシーンがあったそう。日本では考えられないフランクさだ。Canal+というテレビ局の名物であるフランス風の風刺に充ちた人形劇ニュースにも、ちゃんと人形で登場し、赤ちゃんの格好をさせられたりしている。これぞまさに、親しまる皇室の姿、か。もちろんブルボン王朝の流れを汲む、れっきとした王である。しかも皇太子はスラリと背が高く、かなり格好良い。そんな彼もそのうちCanal+で赤ちゃんの格好をさせられてしまうだろうか。
という私の嘆きを知ることもなくフアン・カルロス国王はどうやらアメリカを訪問したらしく、テレビの中でクリントンと肩を並べて笑っている。ところがそこで、「カサブランカ」という単語が耳に飛び込んできた。よくよく注意して聞いてみるが、「国王はカサブランカで声明を発表」と言っている。そうか、フアン・カルロスはクリントンと一緒にモロッコを訪問しているんだな、と納得しかかったがなんかおかしい。ふたりの背後に聳える建物は、あの見慣れたホワイトハウスに違いないのだ。
考えること数分、やっと全ての謎は解けた。やっぱりフアン・カルロスはアメリカを訪問し、クリントンと並んでホワイトハウスの前に立っているのだ。これで奴がモロッコへ行ったというアリバイは崩れた。じっちゃんの名にかけて説明すると、つまりこういうこと。「カサブランカ」とは、「カサ・ブランカ」すなわち”CASA BLANCA”。”casa”といいうのは、スペイン語で「家」という意味。同じく”blanca (/blanco)”というのは「白い」。ということで、「カサブランカ」=「白い家」=「ホワイトハウス」。
ホワイトハウス、まで訳しますかあなた。たとえばニュースで「小渕総理が白い家の前で、」って言われても誰もわかんないよ。うーんやっぱりスペイン恐るべし。おっかなびっくり半年住んでみても、なお恐ろしさが増すスペインであります。
マリア@マドリ
※註1: 「Benjiとは」 : 若林くんのことらしいです。ちなみに日向くんは、「マーク」だったかな。そんでもって、スペイン語版は南米で制作されたという噂。
※註2: 「U2」 : 読み方は「ウードス」です。ウド鈴木から、ズキを取ってくださいね。「ウニドス」というのは、電話会社の名前でした。失礼!
※註3: 「kana」 : 白髪という単語は「cana」と書きます。発音は、普通に「カナ」だけど。思い込み炸裂! あぁ、反省。