そんなこと言っても私は甘いものが大の苦手。小さい頃から長崎名産のカステラ(ザラメの入った福砂屋に限る!)にすら目をくれず、3時のおやつにはお茶をすすりながら辛子明太子を食べていたのだ。生クリームが苦手で、クリスマスにはフランソアのチーズケーキを食べていたのだ。
それでも主食を丸ごとバナナ(まだあるのかな?)でも良しとするダンナと暮らし始めて、少しは甘いものも食べられるようになった。あまつさえ、ケーキが並んでいたら苺のショートケーキを選ぶようになった。まだダンナのように、"羊羹もろ手一本食い"はできないけど。
さてさてスペインに来ると。お昼の安い定食("Menu'")ですら、1番目の皿(サラダやスープ)、2番目の皿(メイン)の後に、カフェまたはポストレ("Postre"、デザート)が付いてくる。夜ならまず間違いなく、カフェ並びにポストレを頼むことになる。ここが日本の寿司屋ならガリを緑茶で流し込んで席を立ちたいとこなんだが、郷に入れ歯がなんとやらってやつで、もれなくカフェとデザートを頼むことになる。
まず、ケーキ類は頼めない。ふわっとした軽い生クリーム、なんて洒落たものはまずないのだ。だいたい、これでもくらえ! と迫力満点のこってりバタークリーム。チョコレートケーキだって、なんだか新しい中性子を発見できるんじゃなかろうかと思うくらいの比重を感じさせる重量感。
アップルパイを頼めばカスタードクリームがたっぷりと敷きつめてあるし、プリンを頼めばしっかりとした生クリームがモリモリ盛られてくるし、アイスクリームは冷たさを忘れるほどべらぼうに甘い!
「そんなん楽勝やん」と思ったあなた、忘れちゃいかんとですばい。ポストレを頼むまでに、胃袋の中にはレンズ豆のスープとアスパラのサラダとエビのガーリックオイル煮と牛ヒレ肉ステーキ300gとポテトフライ150gとパンと水とワイン1/2本が入っとるとですばい。ポストレにたどり着くまでに、スカートのいちばん上のボタンは外されとるとですばい。
しかも、どうやらスペイン人は飲みものまで甘いのが好きなようだ。
カフェを頼むと、砂糖がついてくる。まぁ、当たり前だ。ところがその量が、当たり前じゃない。バルでもマクドナルドでも、渡されるのは最低10g入り。あぁ懐かしいこのサイズ。掌に伝わるこの重量感。スリムな3g入りスティック・シュガーなんて洒落たものは、見たことがない。しかもバルだと、2袋も3袋もくれたりする。
濃いヨーロピアン・コーヒーだからかかなり小ぶりのカップに、みんな砂場遊びのように砂糖をドサドサ入れている。きっとカップの中はコロイド状に違いない。おえーっと思うんだけど、でも甘さを控えめにしちゃうと、美味しくないんだよなぁ、これが。それでも私はカフェ100ccに砂糖5gが限界。まだまだ未熟者。
スペイン人の甘いもの好きは、さらにアルコールにも及ぶ。
ご多分に洩れずスペインでもコーラは大人気なんだけど、おっさんたちによる消費量は日本以上かも。すなわち、ウィスキーだのラムだのをコーラで割って飲むおっさんが多いのだ。でもこれが軟弱やなぁ、ってなわけにはならない。コップの中味のうち、6割から9割は酒なのだ。コーラは瓶でもらって、自分で適当に足しながら飲む。しかもこれ、昼間の飲み方ね。
そして、老いも若きも炭酸飲料大好き。これもアルコールと一緒になんだけど。ビールをスプライトで割れば"Clara"(クララ)という軽くて甘いドリンクに、同じく赤ワインを割れば"Tinto de Verano"(ティント・デ・ベラノ)、その名も「夏の赤」という夏向きのドリンクになる。
ギョギョ、と思うでしょ。これがねぇ、美味しいんだよぅ。私は、バルに入ればまずクララ。バカラオのフライだの豚の耳だのをつまみながら、続けてクララ。エビを殻ごと食べながら(これはだいぶ変な顔をされるので要注意)またクララ。おしゃべりしながらクララ。マキナ(スロットのようなもの)しながらクララ。そろそろお勘定、ってお願いした後にサービスで出てくるのもクララ、クララ。これだけ飲むと、いかに炭酸飲料で割っていようと、さすがにクラクラになるってもの。ウフ。禁断のオイヤンギャグ。
とにもかくにも、スペイン人はあっまーいのが好きらしい。とにかく、甘くあるべきものは甘い。思うに、「あまり甘くなくて上品だ」なんて「いやらしくないヘア・ヌード」みたいなもんだっちゅうことなんだろうな、なんて禁断のオイヤン締めでした。