アビラ / AVILA

紀行文 『8月のメセタは『情熱★熱風)しゃれならんで』


旧市街を城壁が囲む

【歴史】

 中世そのままの趣を残した町。つまり、イスラム教徒からキリスト教徒が支配権を奪い取ったレコンキスタ時代の雰囲気が、そのまま現在まで残っているというのが最大の魅力。旧市街は世界遺産


 アビラの町の最大の特徴は、旧市街がぐるりと上の写真のような城壁で囲まれている点にある。城壁の長さは2500m以上あり、高さは12m、厚さは3mとか。そしてわりと短い間隔で並ぶやぐらが90に、城門が9つ。ヨーロッパで最も保存状態の良い中世の城壁として知られ、世界遺産に登録されている。

 この城壁が完成したのは11世紀。ここをイスラム教徒が支配していたのを、現在パラドールの愛称ともなっているライムンド・デ・ボルゴーニャ(ブルゴーニュ伯ライムンド)がキリスト教の勢力下に入れ(いわゆるレコンキスタ)、イスラム教徒からの反撃を恐れて城壁を築いたというものだ。

 また、アビラは聖女サンタ・テレサゆかりの地。16世紀の女性で、当時「腐敗」していたカトリック教会の内部からの宗教改革を目指して(かどうか)、真冬でも裸足でいるような厳しい修道生活を柱とした裸足のカルメル会を発足させた人物。万事が質素で冬でも裸足でアカギレを作っていた家康の時代に戻そうとした吉宗、と、少しは似ているかもしれない。また、発想も時代も、イエズス会に良く似ていると思う。ベルニーニの彫像『サンタ・テレサの恍惚』で、とくに有名(バタイユ『エロティシズム』の表紙にもなっている)。





【観光】

 城壁とサンタ・テレサが観光のキモ。キリスト教の歴史に興味がなければ、城壁を含めて中世そのまま旧市街の雰囲気を存分に楽しむのが良いかもしれない。

 現在、城壁の上は一部歩いてまわれるようになっており(有料)、ここからカスティ−ジャの大地を見晴らすことができる。観光案内所によると、現在工事を進めていて、数年のうちには城壁を一周ぐるりとまわれるようになる予定とか。またスペインのそこそこ大きい町ならどこにでもあるカテドラルも当然あるのだが、アビラではカテドラルが城壁の一部になっているというのがとてもユニーク。なお城壁に囲まれた旧市街の全景を見たいなら、少しだけ離れたところ、サラマンカ街道にあるクアトロ・ポステスという十字架の立つ高台からが良い。

 サンタ・テレサ関係では、彼女の生地に立つサンタ・テレサ修道院や、かつて生活したエンカルナシオン修道院、遺品を展示するサン・ホセ修道院などがある。

 なお、アビラは標高1.131mあり、スペインの県庁所在地では最も高い場所に位置する。だもんで、冬はやたら寒い。なんせ聖女が冬に裸足でいることが厳しい修行の代名詞となったのだから。春先なども、防寒対策を忘れずに。





【名物料理】

 アビラといえば、アビラ牛。その質の高さはもちろん、フェィレンツェ風ステーキに比べても遜色ない(か、負けない)量の多さも、忘れられない旅の思い出となるはず。


 アビラ牛の骨付きステーキは、Chuleton de Avila「チュレトン・デ・アビラ」。アビラの中心部でも、人口数千人しかいない村でも、名物料理といえばこれ。柔らかく旨みのある牛肉を、基本的には粗塩(あらじお)だけ振りかけて焼いたもの。びっくりするくらい美味い(と私はいつも思う)のだが、さらに量が、驚くことなかれ、平均で一人前700gを超えるのだ。あるレストランでは「そうだな、一人前650g〜750gだね」と言う。100gくらいは誤差の範囲という、恐るべき世界。どうぞ胃薬をお忘れなく。

 また、修道院あるところに甘いものありということで、アビラには名物の菓子Yema「ジェマ」もあり、どこでも売られている。これはもともと卵の黄身という意味なのだが、ここでは黄身をベースに砂糖をどっさり入れて作った菓子を意味する。要するに黄身餡なのだけど、砂糖そのものよりも甘い、と、私は思っている。

 飲み物は、やはりカスティージャ地方ということで、定評のあるRibera del Duero「リベラ・デル・ドゥエロ」の赤が良いなぁ。この地方には他にもToro「トロ」もあるし、さらには原産地呼称制度に認定されていないテーブルワインでもかなり美味しいのが、レストランでも1本1500円とか、1杯200円弱で楽しめる。私はほとんどの場合Vino de la Casa「ビノ・デ・ラ・カサ」(直訳するとハウス・ワイン、いちばん庶民的でおすすめのワイン)を頼むのだが、この地方ではほとんど外したことがない。本当に。ふだん自宅で飲むのもこのクラスで、1本500円〜1000円だ。


チュレトン。衝撃の大きさが伝わらないのが残念。ちなみにフォークとナイフは大ぶりでした。

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