【歴史】
最短で14kmしかないジブラルタル海峡を挟んでせり立つふたつの山がある。古代、ひとはそれを「ヘラクレスの柱」と呼び、世界の果てと信じた。その一方が現在のジブラルタルであり、もう一方がセウタ。前者はスペイン内にあるイギリス統治領であり、後者はモロッコ内にあるスペインの統治領になる。
ギリシャ時代からこの地は、世界の西の果てとして知られてきた。地中海と大西洋を結ぶ要衝であり、フェニキア人、ローマ人、アラブ人……と時の支配者が次々に砦を築いて軍事上の重要拠点とした。
1415年、ジョアン1世統治下のポルトガルがセウタを侵略、初の海外領土とする。いわば、大航海時代の幕開けとなった出来事であった。なお、ジョアン1世の息子のエンリケは大西洋方面に広く探検隊を派遣、航海王子として名を残すことになる。
1580年、スペインによるポルトガル併合に伴ってセウタもスペイン領に。1640年からポルトガル独立戦争が始まり、1668年に独立を果たすものの、セウタはスペイン領に残ることを希望したため、ポルトガル領のなかで唯一返還されることなく、スペインの領土となった。
一方で、1700年から始まって欧州諸国を巻き込んだスペイン王位継承戦争の際に、イギリス−オランダ連合艦隊がスペイン−フランス連合艦隊を破り、1704年、イギリスがジブラルタルを占領。これが、今日まで続くジブラルタルのイギリス統治の始まりである。
ちなみに、イギリスには再三ジブラルタルの返還を求めているスペインだが、セウタ返還の動きはない。といっても、住民投票の結果、大多数がイギリス領であり続けることを願っていることが明らかになり、かつてのセウタと似た状況になっている。現在スペインはモロッコ国内に、このセウタとメリージャの2ヶ所を統治領として所有している。
【観光】
アフリカとヨーロッパを繋ぐ海の玄関口。また、パラドールのような高級リゾートホテルもある。
ジブラルタル海峡を渡るフェリーのルートはいくつかあるが、もっとも近いのがスペインのアルヘシラスとこのセウタを結ぶもので、所要時間45分、高速艇なら30分。それゆえ、ヨーロッパから陸路(海路)アフリカを目指す、あるいはその逆の旅客の姿が絶えない。
ジブラルタルの西にあるアルヘシラスの港を出たフェリーは、海に突き出たジブラルタルの岩山、つまりヘラクレスの柱のひとつをまわりこむようにして、南へ進む。すぐに、アフリカ側の山が見えてくる。これがもうひとつの柱になるわけだが、かつてフェリー内で乗り合わせた女性は「あの山は『死んだ女』と言われるのよ。ほら、死んで仰向けに横たわった女の姿に見えるでしょう?」と教えてくれた。
セウタは自由貿易港で全域が免税となっており、タバコや酒を買うにはいい。またもともと「ラ・ムラージャ」というホテルだったパラドールは、高級リゾートホテルとなっており、ショップも多く併設している。
【名物料理】
セウタからモロッコに入る予定がないひとは、ここでモロッコ料理を楽しむというのもいいかもしれない。逆にモロッコから来たひとは、地中海料理をどうぞ。
私自身はセウタでモロッコ料理を食べてはいないのだが、モロッコ料理を出す店が多いということで、後にモロッコをぐるりと旅したときに食べた代表的な料理を紹介。
〜〜モロッコ料理〜〜
Tajine「タジン」 : 土鍋の蒸し煮で、中身は鶏、羊、牛などと野菜。日本の煮物同様、かなり多くのバリエーションがあるらしい。マラケシュやフェズで食べたレモン・チキンのものは震えるほど美味しかった。また砂漠地方で食べたKaria「カリア」もタジンの一種らしいのだが、しっかりと味付けした挽肉を卵とじにしたもので、こう書いていても胃の叫びが聞こえてくるくらいに美味しいものだった。
Couscous「クスクス」 : 極小のパスタを蒸したものを、肉や野菜のスープをかけて食べる。あっさりした味わいで、お腹もいっぱいになる。これもバリエーションが多い。
Brochette「ブロシェット」 : 串焼きのこと。Kababu「カバブ」だと羊肉、Kefta「ケフタ」だと挽肉になる。私が頼んだときは、レストランでも屋台でも、塩とクミンを添えて出されることが多かった。手をまっ黄色にしてかぶりつくあの美味さ!
Harira「ハリラ」 : 肉からとったスープにみじん切りの野菜やヒヨコ豆、ショートパスタを入れて煮込んだポタージュ風のもの。どこでもひとり分で洗面器一杯分くらい出されたのだが、これが標準なのかどうかはわからない。クノールからインスタント・ハリラが出ている。
Salade「サラダ」 : 真っ赤なトマトを中心に、細かく刻んだタマネギやピーマン、キュウリなどフレッシュな生野菜をふんだんに使っている。コリアンダーが和えてあることもあった。そういえば、オリーブにもコリアンダーが和えてあることが多かった。
最後に、私はどれも非常に美味しくて何度も感動したことを書き足しておきたい。同行者の兄(モロッコ3回め)と兄嫁(2回め)も同意見だが、一方で「モロッコで料理が美味しかったという印象がない」という友人もいるので、好みの問題もあるかもしれないが。
ちなみにこのときの旅行記は、「もろモロッコ!」。アメリカ在住の風来坊な兄と、アメリカ人で日本語堪能でキュートな兄嫁と、私の3人の、サハラ砂漠で初日の出を迎えるレンタカーの旅です。
![]()
レモン・チキンのタジン