カンポ・デ・クリプターナ
/ CAMPO DE CRIPTANA


風車の丘

【歴史】

 ドン・キホーテの舞台になったという風車の村。ラ・マンチャの大地を見晴らす高台に、中世そのままの光景が残っている。


 先史時代から人類が住んでいたと言われるが、13世紀に最終的にレコンキスタされ、それ以降はキリスト教徒の支配下に入っている。風車は16世紀に建てられたといい、小麦を挽くのに使われていた。「もともと南米に移民したここの住民が故郷を偲んで風車を寄付した」という説を耳にしたことがあるが、まだ真偽を明らかにできていない。


 スペイン中世の文豪セルバンテスによる世界的ベスト・セラー、一説によると聖書の次に売れているという『ドン・キホーテ』は、このラ・マンチャを舞台にしている。

 1547年にこの貧しい地方の貧しい家に生まれたセルバンテスは、71年、一攫千金を狙ってスペインがオスマン・トルコを破った歴史的なレパントの海戦に参加する。そのとき一生左手が使えなくなる負傷をするものの、大いに活躍して「レパントの片手男」と称えられる。ところがスペインへの帰途に身代金目当ての海賊に捕えられ、スペインに帰れぬまま5年を過ごす。帰国後は困窮のなか、無敵艦隊の食糧徴発係を経て、滞納税金の徴収史をしているときに無実の罪で投獄される。その獄中で書き出したのが、『ドン・キホーテ』といわれる。


〜〜ドン・キホーテ〜〜

 ときは16世紀末〜17世紀初頭、ところは乾いた大地が広がるラ・マンチャ。50歳になろうとする郷士キハーノは、現実にはもはや廃れてしまっている騎士道物語のファン。読みすぎるうちに現実と妄想の区別がつかなくなり、自らを遍歴の騎士ドン・キホーテと思い込むようになる。そしてたまらず時代遅れの甲冑を身につけて、颯爽と痩せ馬ロシナンテにまたがり、近所の農夫、太っちょのサンチョ・パンサを伴って旅に出たのだった。心に抱く恋のお相手はドゥルシネア姫、実際のところは隣村の田舎臭いおねえちゃんなのだけど。

 大長編の『ドン・キホーテ』の中でもっとも有名なストーリーが、風車との対決である。2回めの旅に出発した主従は、大地に数多くの風車が並ぶのに出くわす。サンチョ・パンサが「あれは風車だ」と止めるのも聞かずに、騎士道精神に溢れるドン・キホーテは「巨人の群れだ!」と勇ましく突っ込み、槍をその羽にむんずと突き立てる。しかしその瞬間、無情にも風が吹きはじめた。哀れドン・キホーテは、回転しはじめた羽に槍を折られ、自身は地面に叩きつけられる。いや、それでこそカバジェロ(騎士)さね! 不屈の精神を胸に、ドン・キホーテの旅は、さらに続くのだった……。

 ちなみに、1605年の第1部刊行から10年後となる1615年、第2部が出されている。これは、第1部の成功を見て登場した「偽ドン・キホーテ続編」に対抗するためといわれる。第1部で郷士(イダルゴ)だったドン・キホーテは、ここでは騎士(カバジェロ)に出世している。さらには、第1部の主役である自分たちの知名度が高くなっていることや、その後、偽の続編が出されたことなどを踏まえた言動が随所に見られ、17世紀にしていきなりメタ・フィクションの様相を見せる。

 第2部は、正気に返ったドン・キホーテの死によって幕を閉じる。「また一緒に旅に出ましょうや」、そう泣きすがるサンチョ・パンサの姿が、涙を誘う。

 というわけで、もっともドン・キホーテらしい光景を残すこのカンポ・デ・クリプターナには、交通の便がさほどよくないにも関わらず、世界中から観光客が訪れる。また、とくに自動車のCMが撮影されることも多く、私は実際にプジョー307が発売前にCM撮りをしているのに遭遇した。




【観光】

 風車の一部は内部見学可能。近郊には、ドン・キホーテゆかりの地と言われる場所も多い。

 10基の風車のうち、ひとつは16世紀当時の粉挽きの仕組みを見学でき、別のひとつはツーリスト・インフォメーションになっている。

 隣のアルカサル・デ・サン・フアンの町にはドン・キホーテが生まれたという家が、エル・トボソの町にはドゥルシネア姫が住んでいたという家が、それぞれあると地元の住民は主張する。いや、あれはフィクションなんだが……。なんて、言いっこなし。現実と妄想の区別がつかないのはドン・キホーテだけではないようだが、この際、そんな物語を丸ごと楽しむのも良いかもしれない。。




【名物料理】

 ラ・マンチャは庶民的な赤ワインに、塩分をしっかり含んだクセのあるマンチェゴ・チーズが有名。


 マンチェゴ種の羊の乳で作った、D.O.Queso Manchego「ケソ・マンチェゴ」(マンチェゴ・チーズ)に、D.O.Valdepen~as「バルデペニャス」や、D.O.La Mancha「ラ・マンチャ」の赤ワイン。どちらも、飾らない偉大なる田舎の味がする。

 ラ・マンチャの名物料理のひとつに、Migas「ミガス」がある。これは家庭では、前の日の残りのパンを、ありあわせの野菜や肉とニンニクを効かせたオイルで炒めて作るもので、日本の味噌汁かけご飯に近い雰囲気。もともとは、塩分が多いために1日経つとそのままでは食べられなくなるスペイン製フランスパンの再利用法として考え出されたものであり、貧しいこの地方ならではの料理といわれている。ちなみにアンダルシア名物のガスパチョにも、水で戻したパンを入れる。

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