【歴史】
1236年、レコンキスタで南下してきたキリスト教徒にコルドバを占領されたイスラム勢力が逃れてきたのが、ここグラナダ。イベリア半島の南に位置するが、周囲を高い山に囲まれた土地。2年後にはここにナスル朝を建国、1492年に征服されるまで、イベリア半島に残った唯一のイスラム教国として最後の華を咲かせる。
グラナダにナスル朝が起こったきっかけがキリスト教徒のコルドバ征服にあるのだから、この当時すでに、イベリア半島ではキリスト教徒の勢力が圧倒的に優勢だった。コルドバからとりあえず逃れてきたかたちのイスラム教国だが、いつか滅亡するのは時間の問題といったところだ。だが、滅びの美は恐ろしい。そこでグラナダには、やぶれかぶれ的妖しい文化が華開いた。
周囲は完全にキリスト教徒の勢力が優勢なイベリア半島の中で、しかしグラナダは実に250年もの間、イスラム教徒の最後の砦となってきた。カスティージャ王国などと友好関係を結んできた外交努力もあるし、グラナダを囲むシエラ・ネバダの高い山々(最高標高3,482m)が、自然の城塞という役割を果たしてくれたこともある。そんなグラナダが、カスティージャ女王イサベルとアラゴン王フェルナンドとの結婚によって成立した「スペイン」によって陥落したのが1492年、これがスペイン統一が完成した年ということなる。同年にコロンブスが新大陸を発見し、スペインに莫大な富をもたらす。こうしてスペインは、太陽の没することなき帝国へと大躍進を果たすのであった。……あんまり続かなかったけどね。あぁ諸行無常。
ちなみに「グラナダ」とは、スペイン語でザクロを意味する。
【観光】
アルハンブラ宮殿には、世界中から観光客が訪れる。スペイン随一の観光スポットと言ってもいいだろう。この宮殿と、隣接するヘネラリフェ庭園、それにもともとアラブ人が砦を築いた古い街並みが残るアルバイシン地区は、世界遺産に登録されている。
グラナダの「滅びの美」を一手に引き受けて具現したようなアルハンブラ宮殿(スペイン語では「アランブラ」)。趣向が尽くされた各々の部屋には、それぞれ伝説や恋物語がまつわっていたりする。このあたりは、1826年から3年間スペインに滞在したアメリカ人作家ワシントン・アーヴィングの『アルハンブラ物語』に詳しい。
敷地の南に建つのはアルカサバ、物見の塔。ここの入り口には日本語を喋るおじさんがよく座っているらしい(3年越しに2回行ったのだが、そのたびに見たというか話した。他にも目撃談多数)。宮殿は、船の間の素晴らしい装飾、それに続く大使の間の豪奢な装飾、ライオンのパティオを囲む柱の繊細な美しさと対照的なライオン像の稚拙さ、二姉妹の間のため息の出るような鍾乳石飾り、アラヤネスのパティオの涼しげな雰囲気など、全体の建築はもちろん、細部の装飾まで「イスラム最後のあだ花」と呼ばれる美しさをゆっくりと味わってみてほしい。
なお、ここにもすべてをぶち壊しにするルネッサンス様式のカルロス5世宮が、16世紀に遠慮もなく作られている。まぁそれもスペインさ。敷地の東側は、夏でも雪解け水の音が涼しげなヘネラリフェ庭園。緑に囲まれて雪を頂くシエラ・ネバダ山脈を眺めるのは、なんとも言えずうっとりする。
ほかの見どころとして、洞窟でジプシーのフラメンコが見られるサクロモンテがあるが、ホテルからのタクシーの送迎を予め手配しておくなど、防犯面でご注意を。また、古い街並のアルバイシンもある。
ちなみにグラナダの水道水は飲むことができる。シエラ・ネバダの雪どけ水は、夏でも冷たくて本当に心地良い! グラナダから約30kmの場所にはヨーロッパ最南端のスキー場があって、Sol y Nieve、「太陽と雪」というこれまたロマンチックな名前になっている。
【名物料理】
アンダルシアの名物料理は、なんといってもGazpacho「ガスパチョ」、冷たいトマトスープ。あとは魚のフライなど。
とくにグラナダで有名なのは、圧倒的な量のタパス。もともと、ワインを飲む際に、壜にハエなどが入らないようにパンやハムでフタをした(tapar)という起源をもつタパスは、スペインでワインやビールを頼むとそれに添えて出される小皿料理。……なのだが、実際には近年、添えて出されるのは乾きものが中心で、タパスは別料金で頼まなければいけないところが増えた。しかしグラナダは違う。ものすごい量のタパスが、惜しげもなくわんさか出てくる。そのすごさたるや、イメージでいうと、マクドナルドでコーラを頼んだらハンバーガーがついてきた、というのに匹敵する。一度、ぜひ体験してみてください。