マドリード / MADRID

首都マドリードの歴史 『エスパーニャよりはじめまして』
紀行文 『旅立ち、0キロメートル地点にて』
お祭り 『ゴヤと、お針子さんの恋占いの話』


マジョール広場


【歴史】

 1561年、ヨーロッパのほとんどから新大陸まで影響下におく未曾有の大帝国となった神聖ローマ帝国の皇帝カルロス5世の子フェリペ2世は、スペインの首都をイベリア半島の中心に位置するマドリードに移す。これにより、当時は広大な荒地が広がるだけだったマドリードが、一気に発展することとなった。

 ちなみに、発音はあくまで「マドリー」で。


 フェリペ2世から始まる140年間を、スペイン=ハプスブルグ朝と言い、これがだいたい「太陽の没することなき帝国〜芸術の黄金世紀」と呼ばれる時代と重なる。それはすなわちスペインの栄光と、没落の日々であった。
 皮肉なもので、無敵艦隊があっさり破れ、イギリスに大西洋の覇権を奪われてから、芸術の黄金世紀かはじまる。かつて、無敵艦隊がオスマン・トルコ海軍を華々しく破ったレパントの海戦に参加し、手柄を挙げながらも不運が重なり牢獄暮らしとなったセルバンテスは、破れかぶれで近代小説の祖と呼ばれる『ドン・キホーテ』を書き、フェリペ4世の宮廷画家だったベラスケスは、巨匠ピカソも師と仰ぐほど中世絵画の最高傑作を描き続けた。

 顎の長いのが特徴のハプスブルグ家は、4代目のカルロス2世が世継ぎを残せず断絶。近隣諸国の思惑も交えてすったもんだの結果、1700年、フランスからルイ14世の孫であるフェリペ5世が迎えられた。ここからナポレオンに率いられたフランス軍が侵攻するまでの約100年間が、"スペイン=ブルボン朝"。フェリペ5世は田舎っぽいスペインをフランス化しようと、市街地を整備。さらに4代目となるカルロス3世は、都市作りを一気に進め、自然科学史博物館などを建設した。この建物こそ、現在のプラド美術館である。また続くカルロス4世の宮廷画家だったのが、ゴヤ。プラド美術館に傑作『カルロス4世の家族』、『裸のマハ』、『黒い画シリーズ』、そしてナポレオン軍に対するスペイン独立戦争の様子を描いた『5月2日』、『5月3日』が展示されている。





【観光】

 スペインが太陽の没することなき帝国で、カルロス5世が神聖ローマ帝国皇帝で、オランダもイタリアも南北アメリカも自国の領土だった時代の富の名残りが、あちらこちらに残っている。その「遺産」が、いちばんの見どころだろう。

 ロマネスク教会美術からボッシュ『悦楽の園』やフランドル派など海外作品も交えつつ、エル・グレコ、ベラスケス、ムリーリョ、ゴヤなどスペインの近代絵画まで膨大な数の所蔵を誇り世界三大美術館に数えられる(とスペイン人はいう)プラド美術館、それにピカソの大作『ゲルニカ』やミロ、ダリなどの代表作品を展示する現代美術館レイナ・ソフィア芸術センターは、訪れる価値があるだろう。拡張後、ユニークなエクスポジションも常時行われるようになった。

 また総室数2800の王宮も人気が高く、上記の二大美術館とあわせてこれが三大定番観光スポットとなっている。スペイン広場マヨール広場ソル広場は、広場好きじゃないとあまり面白くないかもしれない。マヨール広場なら、敢行というよりも、観光の途中にここのカフェのテラス席に座ってコーヒーを一杯飲む、というのが、たぶんいちばん楽しい。

 ガイドブックによってはラストロ(蚤の市)レティーロ公園を薦めてあるが、こちらはもし余程興味があるのではない限り、あまりおすすめしない。スリ泥棒かっぱらいに遭う可能性が、どうしても高くなるので。

 そう、スペイン観光でいちばん心配されるのが、治安の面。旅行中、安心して観光できないようでは困いますよね。でも、2004年から、だいぶ状況は良くなってきました。また、自衛策はあります。パスポートはホテルに預けて散策時にはコピーだけを携帯し、できるだけタクシーで移動を。街角で地図を広げるのと、人通りの少ない細い道に入るのは厳禁。その他の詳しい情報は、治安情報のページも見てください。


 ところで、土産品やちょっとした食べ物などを買うのに便利なのが、デパートEl Corte Ingre's「エル・コルテ・イングレス」。どこにでもあるし、っていうか、スペインで唯一のデパートのチェーン。ワインやオリーブなども、ここで買えば空港の免税店よりもだいたい安い。地下のSupermercado「スペルメルカド」、または高級品ならClub de Gourmet「クルブ・デ・グルメー」へ。

 あと、ぜひ留意しておいてほしいのが、健康管理。内陸性気候に特有の強烈に乾燥した空気(実感では、カリフォルニアの半分ぐらいの湿度しかない)と、標高660メートル(飛騨高山に相当)にあることに由来する朝夕の冷え込みの厳しさと、キャッチフレーズに表されるように強烈な太陽で日中に一気に上がる気温のため、到着翌日にガクッと体調を崩すツーリストが少なくない。あのピカソだって、ベラスケスの勉強にマドリードを訪れ、気候の厳しさに身体を壊して帰ったのです。

 真夏以外は念のための長袖、それにふだん用いている風邪薬、解熱剤、ねんのために胃薬を。スペインではイブプロフェンなど、日本の4〜6倍の量を含んでいるため、こちらの市販薬はあまりお勧めしません。そして、のど飴も、かなり有効です。旅行中は、意識的に水分補給をしてくださいね。





【名物料理】

 カスティージャ地方の中心ということで、名物料理はカスティージャ料理。イベリア半島のど真ん中なんだから、要するに、肉類を焼くか煮ました、というものだ。どっかり腹にたまるのが、最大の特徴。


 町の名前を冠するCocido Madriren~o「コシード・マドリレーニョ」(マドリード風煮込み)が、もっとも代表的。これは、伝統的には生ハムの骨や豚の脂身や血のソーセージや牛もも肉や骨付き鶏肉やヒヨコ豆やジャガイモなどを壺に入れて炭火でコトコト煮て、最後にニンニク油で炒めたキャベツをどっさり載せるというもので、ある説によると、完食すれば8000kcalになるらしい。前菜としてスープ部分を、メインとして具を食べる。同じタイプのもので、Callos「カジョス」(内臓の煮込み)も人気が高い。

 他にも首都マドリードには、スペイン全土のうまいものが大集結。まっとうに美味しい日本食レストランもある。財布と相談して、好きなものを食べてください。


 ワインもまた全国の良いものが揃っているのだけど、同じカスティージャ地方ということで、ちょっと良いものならまず筆頭が北のD.O.Ribera del Duero「リベラ・デル・ドゥエロ」。よりしっかりと重厚な赤がいいときはD.O.Toro「トロ」。また私自身はほとんど赤しか飲まないのだけど、D.O.Sigales「シガレス」のロゼ、D.O.Rueda「ルエダ」の辛口の白なども定評がある、っていうかかなり美味しいと思う。

 テーブル・ワインとしては南のラ・マンチャのD.O.Valdepen~as「バルデペニャス」あたりがメジャー。安いワインで味がイマイチだったら、Casera「カセラ」(カロリーオフの甘い炭酸飲料)やGaseosa「ガセオサ」(炭酸水)で割ってどんどん飲めば良い。とくに夏の昼食なんかは、こうやって飲むのが定番。だからこのドリンクの名称は、Tinto de Verano「ティント・デ・ベラノ」(夏の赤)、なのです。



コシード・マドリレーニョ

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