【歴史】
「小ローマ」と呼ばれるメリダには、世界でもっとも保存状態が良いといわれるローマ遺跡が残る。また「銀の道」の重要拠点でもあった。
メリダの町は、紀元前25年に、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥス帝の命により建設された。現在のポルトガル中部からイベリア半島内陸部に及ぶ属州ルシタニアの都と定められたメリダは、商業と文化の中心都市として発展する。またここは、銀の道の主要な町のひとつであった。
〜〜銀の道〜〜
ローマ時代、スペイン北部カンタブリア地方では銀や金などの鉱物が採れていた。そこでローマ人は、これらの鉱物を輸送するため、スペインを南北に横断する道路を建設した。実に全長850km(およそ東京−広島間に相当)に及ぶこの道は、「銀の道」と呼ばれた。
カンタブリア地方のヒホンから始まるこのルートは、オビエド、レオン、アストゥルガ、サモラ、サラマンカ、プラセンシア、カセレス、メリダ、そしてサフラと続き、最後にセビージャに至る。ここで鉱物は船に乗せられ、大西洋から内陸深くまで船を導くグラダルキビル川を下り、ジブラルタル海峡を通って地中海に入って、海路イタリアまで運ばれたという。
この道は現在も国道630号線として機能しており、幹線道路ではないぶん、田舎の光景を満喫しながらドライブを楽しめるコースとなっている。
【観光】
メリダのローマ遺跡群は、世界遺産に登録されている。町は、散策するのにちょうど良い大きさ。
世界でもっとも保存状態が良いといわれる円形闘技場とローマ劇場は、同じ敷地内に隣接している。円形闘技場は紀元前8年に建設されたもので、収容人員14.000人という大規模なもの。また大理石の列柱が美しいローマ劇場は紀元前15〜16年に作られたもので、6000人の観客を収容したという。
町外れのグアディアナ川にかかるローマ橋も、紀元前1世紀に建設されたもの。62のアーチが支える全長約800mのこの橋は、21世紀のいまも現役で、石畳を歩く市民の姿が絶えない。また、市内に高々とそびえるトラヤヌス帝のアーチも同時代のもの。そこから角をふたつほど曲がったところにあるディアナ神殿となるとさらに古く、紀元前2世紀のものと推測されている。さらに、国道630号をカセレス方面に向かうと、ロス・ミラグロスの水道橋の遺跡が見える。
メリダでは毎年夏に演劇フェスティバルが開催されているが、舞台となるのはこのローマ劇場。2003年に運良く訪れることができたが、夏の長い陽が沈んだ夕闇に照明で浮かび上がる舞台は幻想的で、2千年前の姿そのままの客席に座っての観劇は、なかなか感動的なものだった。ちなみに、内容は思いがけず庶民的な気取らないもので、詰めかけた市民の笑い声がさざめく、ほのぼのと温かい雰囲気だった。
【名物料理】
エストレマドゥラの中でも南に位置し、アンダルシア地方の影響も強く受けているメリダ。厳しい暑さを凌ぐ冷たい野菜料理は、とくに美味しく感じられる。
夏野菜の炒め煮を冷たくして食べるPisto「ピスト」は、お隣ラ・マンチャ地方のPisto Manchego「ピスト・マンチェゴ」が有名だが、スペイン中でよく食べられる料理。材料としてはトマト、タマネギ、ズッキーニが定番だが、この地方では特産品である赤ピーマン(パプリカ)をふんだんに使うのが特徴。口に入れると、自然な甘みがいっぱいにひろがる。
また、近郊にはHigo「イゴ」(イチジク)の産地もある。Frutos Secos「フルトス・セコス」(ドライフルーツ)としてお馴染みだが、この地で何度か食べた、イチジクをコンポートしたものをチョコレート・コーティングしたデザートは、とても美味しかった。
ワインは、メリダを流れる川の河畔という意味の、D.O.Ribera del Guadiana「リベラ・デル・グアディアナ」。赤、白ともに主に地元での消費用として生産されてきたが、近年は品質向上に取り組むワイナリーも増えてきた。98年に、原産地呼称制度に認定された。
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ピスト(中央部分)。レストラン用の盛り付け