ペニャフィエル / PEN~AFIEL
リベラ・デル・ドゥエロ / D.O. RIBERA DEL DUERO


ベガ・シシリアのワイン蔵

【歴史】

 役場からもらった資料によると、歴史は先史時代に遡るらしい。だけどペニャフィエルにとってもっとも重要なのは、この20年間だろう。


 「ペニャフィエル」という名前を日本で売っているガイドブックで探しても、まず見つからない。ここはバジャドリー県にある、丘の上に建つ城塞を中心に広がる小さな村だ。

 ただ、ペニャフィエルという名前でピンとこなくても、Ribera del Duero「リベラ・デル・ドゥエロ」といえば、ワイン好きのひとなら思い当たるかもしれない。そう、この村は、スペインの高級ワインの原産地呼称制度認定の産地であり、近年、世界中のワイン愛好家の間にスーパー・スパニッシュ・ブームを巻き起こした震源地だ。


 リベラ・デル・ドゥエロの象徴ともいえるワイナリーは、押しも押されもせぬスペイン産最高級ワインであり、「スペインのロマネ・コンティ」と呼ばれるUnico「ウニコ」を生産するVega Sicilia「ベガ・シシリア」。創業は1864年、素晴らしい品質のワインを限定生産してきたこのワイナリーが産み出すワインは、スペイン王室御用達なだけでなく、イギリスのチャールズ皇太子とダイアナの結婚式の際に用いたいと、エリザベス女王の意向でイギリス王室から打診があったというほど。このときベガ・シシリア側は、一定の品質のワインをそれだけの数量揃えることはできないからという理由で丁寧に断ったという。同社の輸出責任者から直接聞いたので、間違いないだろう。

 そんな孤高のワイナリー、ベガ・シシリアだけが突出した存在だったこの地域が、原産地呼称制度に認定されたのは1982年。その背景には、70年代にここにワイナリーを開き、80年代にはアメリカのワイン評論家ロバート・パーカーによって絶賛を受けたアレハンドロ・フェルナンデスPesqueraペスケラの大成功がある。これによってスーパー・スパニッシュ・ブームに火がつき、それまでスペインワインの主流だったD.O.Rioja「リオハ」(特選原産地呼称制度認定)を中心とするしっかりとしたタンニンの重さに価値を置く伝統的なスタイルから脱却し、力強くストレートながらも軽やかな味わいをもつ個性的なワインが次々と生産されはじめたのだ。その中心が、リベラ・デル・ドゥエロなんである。

 現在、スーパー・スパニッシュ・ブームは一段落したが、ベガ・シシリア社は最低でも10年、ワンランク上のReserva Especial「レセルバ・エスペシアル」なら最低30年熟成してから出荷するウニコに加え、熟成5年のValbuena「バルブエナ」、さらに3年の早飲みタイプAlion「アリオン」と新しいラインを次々に発表している。また大旋風を巻き起こしたアレハンドロ・フェルナンデスも、コンダド・デ・アサデエサ・ラ・グランハエル・ビンクロと次々に新しいワインを発表、それぞれ大成功を収めている。現在、この地域にあるワイナリーは100を軽く超えているというかもうすぐ150に達するということで、まだその勢いは止まることがなさそうだ。





【観光】

 この村を訪れるひとのほとんどが、ワインに興味のあるひとだろう。村にはワイン博物館をはじめ、一般に公開しているワイナリーもある。もちろん、お土産はワインで決まりだ。

 丘の上の城塞は、古くは10世紀に起源をもち、15世紀に現在の形になったものだが、中はつい最近、県立ワイン博物館となった。ワインの歴史や作り方、リベラ・デル・ドゥエロの発展などを学ぶことができる。あいにく試飲はなし。

 村の中心にあるのはコソ広場で、1433年に作られたものがほぼそのままの状態で残っている。周囲はぐるりと、バルコニーをもつ3、4階建ての建物が並んでいる。広場は舗装されておらず、広場に面している観光局の話では、祭りの日にはここで闘牛が行われるという。なんて、まったく、中世のまんま。

 いくつかのワイナリーは、一般見学を許可している。これは観光局を訪ねて、そこで問い合わせてもらうのがいちばん良いだろう。





【名物料理】

 カスティージャ・イ・レオンということで、肉を焼くか煮るかというのが基本なのだが、このあたりは仔羊がとくにおすすめ。


 このあたりでメニューを開いてみると、Cordero Lechazo「コルデロ・レチャソ」という文字を見かけることが多い。コルデロというのは生後1年未満の仔羊のことなのだが、レチャソという単語は、実は辞書には載っていない。ではいったいなんのことかというと、標準スペイン語でLechal(乳呑み)という意味。この料理を紹介してくれた友人は、方言なのではないだろうかと推測していた。

 このコルデロ・レチャソ、当然、肉に羊の臭みなんかまったくなく、とろけるように柔らかい。しかもこれをブツブツと骨付きのまま切ったものを金串に刺すと、さすがワインの産地、ブドウのつるを乾燥させたもので焼き上げるのだ。これがまた香ばしいことこの上ない。控えめに表現しても、極楽の美味である。しかもこのあたり、トマトやレタスなんかのふつうの野菜も、なんだか泣くほどに美味しいのだ、本当に。


 飲み物はもちろん、リベラの赤。ウニコ、といいたいところだが、あんな何万もするワインはそうそう飲めない(一度だけ、友人の奢りでクリスマスに空けただけだ)。もちろんVino de la Casa「ビノ・デ・ラ・カサ」(ハウスワイン)でも充分に美味しいし、原産地呼称制度認定地域をわざと外して、高品質なテーブルワインを作っているワイナリーもあったりする。それでもなお、ものすごく独断でひとつだけ勧めさせてもらうと、Convento San Francisco「コンベント・サン・フランシスコ」というワイナリーの、同名のワインがあったら、ぜひ試してみてほしいです。たぶん、スペインワインのイメージが変わります。

 このワイナリー、技術責任者にしてオーナーのハビエルが同い歳ということも少しあったりするのだけど、実際にワイナリーの中を見学してみて、これほど徹底して清潔に、ブドウがワインになる過程に最大限の注意と敬意を払って接しているところはそうそうない、と、確信した。(あ、ベガ・シシリアの生産管理も別格のすごさだったけど) 味ももちろん、美味しいし、楽しい。そして価格は、ウニコよりだいぶ安いです。毎年品切れになるのが、難点かな?


噂のコルデロ・レチャソ


噂のコンベント・サン・フランシスコ

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