【歴史】
かつては山賊が拠点としていた山中の町は、近代闘牛発祥の地でもある。
マラガの輝く地中海を背に、内陸へ約50km。白っぽい石灰質の岩山を、気の遠くなるようなカーブを描きながらひたすら登る。標高700mの地点でふっと開けた台地が、ロンダの町だ。
ここには新石器時代から人類が住んでいたと言われ、ヨーロッパでももっとも古い町のひとつになるという。後にケルト族が住み着き、やがてローマ人が城塞を築いた。イスラム教国の時代、町はコルドバの中央政府に反抗する勢力の中心地となったが、後にグラナダ王国の支配下に入る。そして15世紀末、スペイン統一を果たしたカトリック両王の手に渡った。
19世紀のスペイン独立戦争ではロンダはナポレオン軍に対して頑強に抵抗を続けたが、この地域に出没する山賊もまた、フランスからの侵略者を苦しめたという。19世紀半ばのメリメの小説であり、後にビゼー作の歌劇によって世界中に知られることになった『カルメン』でも、ロンダは密輸業者が暗躍する土地として描かれている。
ロンダはまた、近代闘牛発祥の地としても知られる。それまでの闘牛は、貴族が馬上から槍で牛を倒すというものだったのだ。話は、1698年に遡る。ある日、闘牛に興じていた貴族が落馬し、獰猛な牛が襲いかかってきた。そこにひとりの使用人が飛び出し、手に持った帽子で巧みに牛の攻撃をかわして主人を助け出した。以降、こうして人間が同じ地面の上に立って牛と対峙するスタイルが闘牛となるのだが、この青年こそ、近代闘牛の父フランシスコ・ロメロである。18世紀後半に活躍した、生涯で6.000頭の牛を殺したと言われる伝説の闘牛士ペドロ・ロメロも、彼の血を引く一族である。
【観光】
町を二分する断崖とそこに架かる橋、そしてスペイン最古の闘牛場が見どころ。
ロンダの町は深く険しい谷によって分断されている。この断崖は18世紀に作られた石造りのヌエボ橋で結ばれているのだが、川底までの高さは120m。橋を渡りきったところをまわりこむと、峡谷に突き出す見晴し台へ出ることができる。すぐ下は断崖絶壁、遥か遠くまで続くのは山賊が跳梁したアンダルシアの無骨な山。目の眩むような光景は、きっと強く印象に残るはず。
闘牛場は1785年に建てられたもので、現存するものではスペイン最古。規模は小さいが、瓦葺の素朴な闘牛場は、なかなか趣がある。内部には闘牛博物館もあり、有名闘牛士のゆかりの品々の中に混じって、日本人闘牛士のパネルも展示してある(1999年)。
ロンダは小さな町だが、このようにドラマチックな歴史と、スペクタクルな景観を併せ持つ魅力的な土地である。このため、ヘミングウェイや東郷青児をはじめ、現在でも世界中から芸術家が訪れる町として名高い。マドンナもまた、この町に来て、プロモーションビデオを撮影したとのことだ。。
【名物料理】
山中なので、肉類が中心。塩漬け豚肉や腸詰め類は、料理にも使われる。
ロンダの特産品のひとつが、Castan~a「カスターニャ」(栗)。Almendra「アルメンドラ」(アーモンド)も有名で、お菓子だけではなく料理にも用いられる。また肉類ではCabra「カブラ」(ヤギ)、それにChacina「チャシナ」という塩漬け豚肉がよく食べられる。
また、スペインでは修道院あるところ甘いものありということで、フランシスコ会修道院、カルメル会修道院を発祥とするお菓子も、デザートやお土産として人気がある。
山賊の町らしく、飲み物で有名なのはアルコール度数が高いAguardiente「アグアルディエンテ」(蒸留酒)。フレーバー焼酎とでも言おうか、マラスキーノチェリーやヤマモモなどの種類があり、食後に飲むと消化を助けるという。しかし、食事の後に山を降りる予定の方は、飲み過ぎによる乗り物酔いにどうぞご注意を。