【歴史】
学問の都、歴史ある大学町。あと800年ほど経ったら、つくば学園都市もこう呼ばれるのかもしれない。
ケルト・イベロ族がこの町を作ったのは紀元前217年と言われている。でも町がスペイン史で重要な役割を果たすのは、11世紀にキリスト教勢力の支配下に入った後、1218年に大学が作られてから。スペインでは最古の大学であり、ヨーロッパでもボローニャとパリに次いで3番目の歴史を持つ。
現在もサラマンカ大学には、世界各国からスペイン語やスペインの文化を学びに留学生がやってくる。日本人留学生の数も、少なくない。この800年、サラマンカは学問と青春の町であり続けているのだ。
【観光】
旧市街は世界遺産に指定されている。まずは大学、そしてカテドラルを。実はそれぞれに、あまりガイドブックには載っていないが、ひとめではわからない曰くありの装飾が施されている。そんなことも含めて、いろいろ建築物がおもしろい町。
サラマンカの町に車かバスで入るには、川にかかる2本の橋のどちらかを渡ることになる。真ん中にもう1本、1世紀くらいに作られたローマ橋があるのだが、これは歩行者専用。とにかくこれらの橋の向こうから、町に入る前に一度、ゆっくりと景色を眺めてみてほしい。緩やかに流れる川の向こうに、ややピンクがかった暖かい色合いの石で造られたカテドラルを中心とするサラマンカの町が見えるのだが、これが本当にロマンチック。もし夕方だったら、町の全体が黄金色に輝いて見えるだろう。
町の代名詞のような存在の大学は、リブレロス通りに面したファザードが圧巻。カトリック両王のレリーフをはじめ、一面に、燃え立つように美しい、実に細かい装飾がなされている。そのなかの、右側の柱の真ん中あたりに、ドクロがみっつ並んでいる。そのうちのいちばん左のドクロのおでこの上が、ぷくりとふくらんでいる。よく見ると、カエルが乗っているのだ。「このカエルを首尾よく見つけたひとは試験に落ちない」という言い伝えがあるのだが、観光局によると、もともとカエルはキリスト教の7つの大罪のうちのひとつの色欲を表すもので、学問を志して大学の門をくぐるひとは色欲を殺して(だからドクロね)からおいでなさい、という意味だったのだという。そんな由来を知ってか知らずか、サラマンカの土産品店にはカエルグッズが溢れている。ま、いっか。
カテドラルは、12世紀から作られた旧カテドラルと、16世紀から作られた新カテドラルが、ほぼひとつになって建っている。旧カテドラルはロマネスク様式、新カテドラルはプラテレスコ様式など、建築好きには当時の代表的な作品を見られてたまらないだろう。ただ私がいちばん好きなのは、その新カテドラルの、北側のファザードの一部。ここもまた細かい装飾がなされているのだが、その中に実は、宇宙服を着た宇宙飛行士がいるのだ。なんと16世紀に、恐るべき予言がなされていたのである! というわけではもちろんなく、観光局の説明によると、1985年からの修復作業中に付け加えられたものだという。なんでも、このカテドラルに使われていた石質がもろくてもとの装飾がわからなくなっていたところ、主任建築家が「ファザードは人類の歴史を表すものだ。ならば20世紀の私は、20世紀の人類の歴史を描くのが使命である」と、独断で彫り上げたらしい。もちろん賛否両論、喧々諤々の大騒ぎになったが、21世紀のいまもこうして宇宙飛行士はニヤリと不敵に笑っている。たしかに今日だってまた歴史の1ページになるのだけど。ちなみに、アイスを食べているライオンもあったりする。……こんな遊び心が許されるというのは、つくづくすごい国だね。
他にもこの町には、キリスト教の三大巡礼道であるサンティアゴ巡礼道を象徴するホタテの貝殻を刻んだ石で全体が覆われている貝の家、18世紀に作られたバロック様式の実に美しいマヨール広場、妖しいステンドグラスが魅力的なアールヌーヴォーとアールデコ美術館などがある。
さらに、見どころというわけではないが、世界中から留学生が集まっているため、大学の開講期間中には町に若者があふれていて、なんとなく楽しい雰囲気。市民の文化レベルも高いといわれ、興味深いエクスポジションも多い。
【名物料理】
カステイージャ・イ・レオンは、肉を焼いたり煮たりというのが基本だが、とくにサラマンカ近郊には生ハムの名産地がある。
サラマンカ県にあるGuijuelo「ギフエロ」という村は、良質な生ハムJamon Serrano「ハモン・セラーノ」(とくに最高級のイベリコ黒豚の生ハムの場合、Jamon Iberico「ハモン・イベリコ」と呼ぶ)や、腸詰類Embutido「エンブティード」の産地として有名。いちばん有名なのはアンダルシア、ウエルバ近郊のJabugo「ハブーゴ」だが、ギフエロのはあまりクセが強くなくてマイルド。生ハム好きでもそうでなくても、ぜひ試してみてほしい。
サラマンカに留学して(けっこう飲みまわって)いた友人の話によると、バルで出てくるTapas「タパス」(小皿料理)が充実しているのも、サラマンカの特徴なんだとか。私は2度しか行ったことがないのだが、たしかにそのたびに、バルでちょっとした美味いタパスに出会って大いに満足をした。Ribera del Duero「リベラ・デル・ドゥエロ」をはじめとするカスティージャ・イ・レオンの赤ワインでも飲みながら、バルを何軒も、少しずつ飲んで食べながら歩く。そのうち、たぶん友だちができる。なんだか、そういう町である。
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生ハムとチーズ。これはギフエロのではないけれど。