【歴史】
スペインの南、アンダルシアの中心。ローマ遺跡、イスラム支配の名残、そしてカトリックの国スペインの繁栄のすべてを見ることができる町。
ローマ時代の繁栄は、北へ10キロほどの町イタリカの遺跡を見ればたちどころに体感できる。まさに「イタリア」を語源とするこの町、初のローマ帝国初の辺境領出身皇帝であるトラヤヌス帝、そしてその跡を継いだハドリアヌス帝の出身地である。
中世にイスラム教国の支配を受けた、その名残は、町の中心にすらりとそびえるヒラルダの塔を見ればわかる。これはもともとイスラム教徒の鐘楼で、高さ70メートル。複雑なのにシンプルな網状アーチの装飾など、イスラム建築そのもの。また、13世紀からレコンキスタでキリスト教勢力下に入った後にも、14世紀のペドロ1世残酷王はここを拠点とすることが多く、このヒラルダの塔の隣にアラビア趣味のアルカサル(王城)を作らせている。詳しくは、ペドロ1世を主人公にした漫画『アルカーサル−王城−』(青池保子)を。
16世紀から18世紀までは、大西洋からグアダルキビル川を遡行してたどりつくことができるこのセビージャが新大陸貿易を独占。金や銀がわんさか流れ込み(実はほとんど外国へ素通りしたのだが)、素晴らしい繁栄を見せた。どのくらいすごかったかは、ばかでかいカテドラルを見ればわかる。
1992年、万国博覧会を契機に、マドリードとの間を結ぶ新幹線AVEが開通。所要時間、2時間15分なり。
【観光】
セビージャは、スペインの魅力をぎゅぎゅぎゅっと凝縮したような町。上記のようにローマ、イスラム、カトリックのそれぞれの名残あり、太陽あり、情熱あり、美人がいて、酒がうまい、と。きわめつけに、闘牛とフラメンコの本場でもある。オーレ!
上記のヒラルダの塔があるカテドラルとアルカサル(王宮)が、おそらくセビージャのヘソ。必ず訪れることになるだろう。両者は隣り合っているうえに、ともに世界遺産でもある。
カテドラルは12世紀に建てられたメスキータ(回教寺院)の場所に1402年から建設をはじめ、約1世紀後に完成したもの。メスキータの塔ミナレットに鐘を乗っけただけのヒラルダの塔や、整然と緑の樹が並んで祈りの前に手足を洗うための噴水もあるオレンジのパティオが、イスラム教寺院だった名残を伝える。ばかでかいカテドラルは、当時の司教が「後世の人間が振り返って、俺たちを頭がおかしかったんだと思うくらいに巨大なものを」と決意表明しただけのことはあって、ヨーロッパで三番目に大きい。
中に入ると、天井の高さにまず唖然(56m)。世界最大級の祭壇画をもつ主祭壇など、絢爛豪華なキリスト教芸術を存分に味わってほしい。なお堂内には意欲に(1492年、新大陸発見)燃えたコロンブスの墓もあるので、ちょっと探してみてほしい。4人の男が棺を担いでいるが、そのマントの紋章は、それぞれの王国を示している。詳しくはスペイン国旗の紹介ページで。ちなみに最近、コロンブスの遺体のDNA鑑定をすると話題になった。結果は、そういえば知らないぞ。
アルカサルは、グラナダのアルハンブラ宮殿にも劣らない、繊細優美なムデハル建築の傑作。ムデハルとは、キリスト教徒の支配下にあったイスラム教徒のこと。彼らは建築や装飾で非常に高い技術を誇っていたのだ。1364年、ペドロ1世残酷王が築城を命じたものだといい、数代にわたる改修を経て、神聖ローマ帝国皇帝となったカルロス5世が自らの結婚式のために(アルハンブラ宮殿でもやったように世界のどこにでもあるルネッサンス様式に)改修した。最近では、現国王の祖父となるアルフォンソ13世が修復をしている。
公式の謁見の間であり、柱から天井まで贅を極めたきらびやかな装飾にため息が出ちゃう大使の間、細かいアラベスク文様にめまいがしちゃう乙女のパティオに人形のパティオ(偶像禁止のイスラム様式にしては珍しく、ひとをかたどった装飾がある)、アズレージョも目に鮮やかな馬蹄形アーチ……。まさに夢の王城だ。広々とした庭園に伸びる回廊からはヒラルダの塔が見える。また庭園側にひっそりと、水を湛えている地下室のようなものがあり、たしかドニャ・マリアの浴室という名前だったかな、空気までがひんやりと気持ちいいので、セビージャの暑さにやられそうになったときによく逃げ込んでいる。
ここから川までぶらぶら歩いていけば、黄金の塔がある。万博の際に作られたスペイン広場も、陶器の絵でスペイン各地の様子を紹介していて楽しい。そしてこの広場は実に写真になる。夏場などは歩いていくにはやや遠いが、王城とカテドラルの間から、観光馬車が出ている。もちろんタクシーも乗せてくれる。
そんな見どころの多いセビージャだが、しかし、夕暮れからこそが本番だ。と、私は思っている。なんせ夏場は日中の最高気温が平気で40度を超えるし。ということで、陽が翳ってからやおら町に出て、まずはいかにもアンダルシアらしい白い壁が連なるサンタ・クルス街などでバルに飛び込み、ひとまず飲みはじめるというのがおすすめ。
さらに、フラメンコが好きなら、零時過ぎあたりから嗅覚を働かせてフラメンコの匂いがするバルを探し当ててみてほしい。そこらのバルで、そこらのおっさんとおばさんがいて、というごく普通の光景から、いきなりフラメンコが生まれるその瞬間を体感することができるだろう。ちなみに川を渡った反対側、トリアナ地区には地元セビジャーノたちが集うバルがいろいろあるのだが、まだ土地勘のない私としてはひとりで夜中に歩くのはやめている。
ところでセビージャを舞台にした作品としては、ビゼーの『カルメン』、モーツアルトの『ドン・ジョバンニ』と『フィガロの結婚』、ロッシーニの『セビリアの理髪師』などがある。絵になる町、そして自分が主役気分で酔える町、なのだ。あぁ、セビージャを愉しむことなくして、いったい人生はなんのためにあろうか?
【名物料理】
海沿いのアンダルシアは、魚介類が名物。煮るというよりは、揚げるか焼く。オリーブオイルの名産地であり、生ハムの名産地もあり、シェリー酒の産地もある。夜遅くまで飲み歩くのもまた、名物かも。
いろいろな魚介類のフライの盛り合わせ、Fritura de Pescado「フリトゥラ・デ・ペスカド」またはPescaito Frito「ペスカイート・フリート」が有名だし、口に合うというひとも多い。エビ、イカ、イワシ、ヒメジ(に似た小魚)、カレイ(に似た小魚)などなど。レモンをたっぷりしぼって。
他には、夏の定番Gazpacho「ガスパチョ」(トマトベースの冷たいポタージュ)や、さすが闘牛の本場だけにRabo de Toro「ラボ・デ・トロ」(牛テールのシチュー)などなど。
飲み物は、食前酒にはJerez「ヘレス」(シェリー酒)。辛口ならFino「フィノ」、とろりと甘いのならoloroso「オロロソ」。私が好きなのはManzanilla「マンサニージャ」、サンルカールという町で作られるもので、口当たりが軽く、爽やか。食後酒で好きなのはPedro Ximenes「ペドロ・ヒメーネス」(干しブドウから作った甘くて濃いワイン)。Montilla-Moriles「モンティージャ=モリレス」が代表産地だ。そのままでもいいし、バニラ・アイスにかけても、これまた美味いのだよなぁ。甘く酔わせる町だぜ、セビージャ!
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魚介類のフライ